osa5635’s diary

動物と動物園のお話

顔つきが変わったキリン

 前回はみさき公園アミメキリン音羽(オトワ)さんのお話をしました。今回は彼女の夫、仙一(センイチ)さんについてお話しします。

 仙一さんは2003年に浜松動物園で誕生しました。同年に星野監督が率いる阪神タイガースが優勝したことから、星野さんのお名前の「仙一」をいただいたそうです。これについては次回ご紹介します。


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 浜松で生まれた仙一さんがみさき公園にやってきたとき、そこにはオスの先住キリン空(クウ)さんがいました。飼育担当者さんからお聞きしたことなのですが、仙一さんが浜松から運ばれてきたとき、初対面の空さんに襲いかかる仕草をしたそうです。たいていのキリンはこんなとき、環境が変わったことで怯えたり、あるいは先住キリンに甘える素振りをみせたりするはずなのに、仙一さんのそんな行動にはベテランの担当者さんも驚いたといいます。

 さらに彼にはいくつかの奇行もあったそうです。これはオフレコでお聞きしたことなので、ここではご紹介できません。申し訳ありません。 

 そんなことから僕の仙一さんに対するイメージは「変わり者、粗放」。表情も何かアウトローを思わせるものでした。これ、あくまでも僕の勝手な思い込みです。


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 2008年に空さんが他界してしまい、仙一さんはしばらく独居生活が続きました。

 そこへ2010年11月、京都市動物園から音羽さんがやってきたのです。まだ1歳を過ぎたばかりの女の子でした。僕は勝手に心配していました。仙一さんは粗放だから音羽さんに乱暴なことをしないだろうか、と。オスキリンは、ネッキングという、長い首を相手にぶつける攻撃をみせることがあるのです。

 やがて公開が始まり、僕は不安と期待を胸に取材に向かいました。

 みさき公園のエントランスを抜けると、すぐに芝生広場がみえます。キリンの運動場は芝生広場の向こうです。


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 いました。仙一さんと音羽さんが。そして仲良く寄り添っているのです。音羽さんは彼に甘えるように、仙一さんは彼女を慈しむように。

「1頭ずつにすると、両方ともに暴れだして、お互いの姿を追い求めるんですよ」と飼育担当者さん。「音羽がまだ子どもなので、仙一も異性というより仲間意識の方が、今は強いようです」とも語っていただきました。私の心配なんてまったくの杞憂だったわけです。


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 ただ、それまで何度も撮影してきて見慣れたはずの仙一さんの表情が過去にないものだったんですよね。穏やかで優しくて……。自然と僕も笑顔になっていました。

 2010年12月のお話でした。

 その後、仙一さんと音羽さんの間には2頭の赤ちゃんが誕生しています。(2019年現在)