osa5635’s diary

動物と動物園のお話

浜松の涙


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 前回までみさき公園アミメキリンのお話をしましたが、今回もキリンです。前回登場の仙一(センイチ)さんのご両親についてご紹介いたします。

 仙一さんのお父さんはシロ、お母さんはニーナという名前でした。2頭の間には6頭の子どもたちが誕生し、5頭が浜松を巣だっています。

 長女▪ナオコさんが伊豆アニマルキングダムへお嫁入りしたことから始まり、次女▪サクラさんが周南市徳山動物園に、長男▪仙一さんが大阪府みさき公園に、次男▪コウスケさんが姫路市立動物園に、三女▪マオさんが名古屋市東山動植物園にそれぞれ迎え入れられました。末っ子のリョウさんは、そのまま浜松に残っています。

 6頭の子どもたちの名前にはある共通点があります。さて、なんでしょうか?考えてみてください。答は次回に持ち越させていただきます。ヒントは前回の仙一さんの紹介記事にあります。


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   2010年1月3日、僕は浜松動物園を訪れました。これが9度目の訪問でした。いつものペースで撮影を終えたのですが、気になったのがアミメキリンのシロに元気がないように思えたことでした。

 次に浜松を訪れたのは同年の8月15日でした。前回から7か月が経過。その間浜松動物園から相次いで訃報が届きました。ホッキョクグマアムールトラはそれぞれ2頭だったのが1頭になってしまったのです。さらにカリフォルニアアシカのスープラさんが永眠。スープラさんは自然界では平均寿命17歳のところ25才まで生きてくれたのでした。そんな人気者たちの訃報に、僕はシロさんのことがとても気になっていました。

 でも実際に訪れてみると、前回より元気そうに僕の目には映ったのです。相変わらず奥さんのニーナさんとも、仲良くしていました。前年生まれたリョウさんもまだ小さいから、その姿に胸を撫で下ろし浜松を後にしました。次の日、僕はこんな記事を書いています。

『西日本に広がったシロとニーナのネットワーク。次女のサクラのように孫誕生のニュースを届けてくれるのも嬉しいが、シロとニーナにはもっとネットワークを伸ばしてほしい。まだまだ、もっともっと、愛し合ってくれ、シロ、ニーナ』
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 ところが、それから4か月後、ニーナさんが永眠というニュースが届きます。

 シロさんではなくニーナさんが……。少なからずショックを受けました。ニーナさん、2010年12月22日死去。動物園では12月23日から1月10日までキリン舎に献花台を設置するとのことでした。もともと次の元旦には浜松を撮影予定にしていましたので、当然献花もさせていただこうと思いました。

 2011年1月1日、浜松市動物園、通算11度目の訪問。すぐシロさんに会おうと急ぎました。いつものように放飼場ではなくキリンたちが夜を過ごすキリン舎に入りました。まずはニーナさんに献花しようと思ったのです。

「えっ!?」 

 思わず声を出してしまいました。

 目の前に遺影が二つあるのです。一つはニーナ。その隣に、シロさんの写真が……。まぎれもないシロさんの顔。シロさんはその名の通り、顔が白くて分かりやすいのです。

 遺影の横にあるお知らせによると、ニーナさんが亡くなった12月21日から6日後の12月27日にシロさんが永眠したとありました。

 ショックでしばらく呆然とした後、2頭の献花台にそれぞれ花を手向けました。シロさんへの花は動物園が用意してくださっていました。

 傍では若い飼育員さんが祭壇のチェックを行っていました。どこの動物園でも飼育員さんとはよくお話をさせていただくのですが、この日は声をかけられなかったです。続けざまに担当動物が逝去し、ショックは僕の比ではないはず。しばらくして飼育員さんが出ていきました。はなをすする音がしました。哀しみの真っ最中にいたのでしょう。

 先に亡くなったニーナさんが15歳、正に後を追うように逝ったシロさんは21歳の長寿でした。後の発表によると死因は、ニーナさんが心不全、シロさんが老衰ということでした。

 シロさん、ニーナさん、ありがとうございました。カメラを向けると覗きこんでくれたシロさん。シロさんの傍にいつもいたニーナさん。今でもたくさんのことを思い出します。

 衝撃的で悲しい元旦でした。


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 残された最後の子ども▪リョウさんはこのときまだ1歳でした。

 リョウさんはその後すくすく育ち立派な大人のキリンに成長しました。新たに来園したシウンさんとペアになり、ゴロウマルさん、ダイヤさんといった子どもにも恵まれ、浜松市動物園に再びキリン王国を築こうとしています。


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▲両親の死から8か月後のリョウさん